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EquaL 迷宮の国のアリス 文庫版 volume.1一般向


EquaL 迷宮の国のアリス 文庫版 volume.1一般向
1000
装丁:カラー / A6 / オンデマンド (302 P)
重量:200g(風袋15g)
発行日:2008年05月25日
著者:踝 祐吾
表紙・本文イラスト:ドンネルシュタイン(跡地299(仮)
解説:秋山真琴(雲上回廊




 ……一人の少女と出会った。
 いつも笑っている少女だった。

「何だ……コレ?」
「おまじないです」

 あまりに明晰な頭脳を、笑顔の裏に隠した少女だった。

「意味……ですか?」
 少女は笑いながら、虚空にもう一度、その記号を描いて見せた。
 線が二本。
 ただ、それだけだった。
「……記号《それ》の通りです」
 少女は再び、俺の方に微笑みかけた。

 その笑顔が、どこか少し寂しく見えた気がした。

 ……俺がその少女と出会ったのは、
 少し不思議で、少し哀しい、そんな事件だった。





「何が……おかしい?」
 我慢できずにその少女に向かって話しかけると、少女は微笑みながら答えた。
「あの執事さんの死体の足下にだけ、妙に水が捲かれていたんですよ……面白いと思いません?」
「面白いか?」
「それが面白い解を導き出したら、それは面白いでしょう」
 何が言いたいのか、全く理解不能だ。確かに、死体の足元には縁側から一直線に、細長い水たまりが形成されていた。
「全ては、この水たまりが教えてくれています」彼女は庭に走り、ぱしゃっと水たまりを踏みつける。そして俺の方に笑顔で向き直って、こう問いかけてきた。「何故この家で人が死に、火事が起きたのか。それが一つの記号で結ばれているとしたら、どうでしょう?」
 意味不明な単語を並べ立てた少女は、今までにない満面の笑みを浮かべた。
「どうでしょうって聞かれてもなぁ……」
「津嶋さん……でしたね。ちょっと手を出してください」
「手?」
 少し腑に落ちなかったが、俺はその少女に請われるまま、右手を差し出した。近づいてきた少女はどこにしまってあったのか、一本のマジックを取り出す。そして俺の手に何かを書き記した。
「何だ……コレ?」
「おまじないです」
「……だから、何だって」
「意味……ですか?」
 少女は笑いながら、虚空にもう一度、きゅ、きゅとその記号を描いて見せた。
 線が二本。
 ただ、それだけだった。
「…… 記号《それ》の通りです」
 そう言って、いろいろな思惑が混じりこんだかのような、IQ四〇〇の笑顔を俺に向けた。
 そして、俺の手に書かれた記号。
 線が二本。

 俺が数学に少し明るければ、こう答えただろう。

 ……『=《イコール》』……よって、命題と解は等しく成立する、と。

(本文より)




「真実は、一つしかない」
──そう長い文章に表さなくても、
その言葉を如実に表す記号が存在する。

「=《イコール》」……『等号』である。


あの「本格ミステリ・ウエブ小説」が6年の時を経てついに文庫化!

★=《イコール》──それは全ての事象を解へと導くたった一つの記号──。大学二年生の津嶋勇喜は、姉の結婚に伴って訪れた旧家で奇妙な事件に遭遇する。雨上がりの庭に放り投げられた遺体の周りには、あるべき“足跡”が存在しなかった。津嶋がその謎に頭を悩ませる中、微笑みの表情を決して崩さない一人の少女が現れる。彼女の名は芹沢アリス。推定IQ400、オックスフォード帰りの天才小学生が謎を解く。ミステリへのオマージュを幾多に盛り込んだ“本格パスティーシュミステリ”開幕!
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